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日別アーカイブ: 2023年7月30日

犬アトピー性皮膚炎(CAD)の管理について①

季節柄、皮膚症状が悪化するワンちゃんが増えてまいりました。

なかなか痒みが治まらない、皮膚の赤みやブツブツが薬を切ると再発するという悩みを抱えているワンちゃんも多いと思います。

CADを管理するに当たって犬の皮膚の特徴を理解する必要があり、また治療を受け入れてくれるワンちゃんに合わせたスキンケアをしていく必要があると考えております。

 

①犬の皮膚の特徴

・一番外側にある表皮はヒトの1/3の薄さ ➡ 毛がある事によって犬の表皮は薄くなっている

・皮膚のトラブルは猫の3倍

・犬の皮膚病の多くは慢性疾患(アレルギー/アトピー、膿皮症、マラセチア皮膚炎、脂漏症etc.)

 

②指摘されている皮膚治療に対する問題点や有効な併用療法の報告

・抗菌シャンプーの長期使用による抗真菌薬への感受性低下(2013年報告)

・複数の抗真菌薬へ耐性を示すマラセチアの報告(2019年)

シャンプー後に保湿をしないとTEWL(経表皮水分蒸散量)が上昇し角質水分量が減少する(2019年報告)

マラセチアが増殖したCADに対し抗菌シャンプーと保湿系シャンプーで週2回、4週間継続して洗浄効果を判定したところ、どちらの洗浄方法もマラセチアの数は顕著に減る(2021年報告)

・健常犬に対する抗菌シャンプーと保湿系シャンプーのTEWL(経表皮水分蒸散量)の研究では、抗菌シャンプーは健常犬のTEWLを有意に上昇させるが、保湿系シャンプーもマイルドに上昇させる(2021年報告)

・CADの皮膚バリア低下にはセラミド不足が関与している(2013年報告)

・フードにリノール酸(必須脂肪酸)をベースの2倍添加したところ、24時間後にセラミドの量が倍に増えた(2018年報告)

 

③再発を繰り返す皮膚の炎症

・CADは皮膚バリア障害が深く関与しており、健常犬に比べると犬のアトピーではTEWL(経表皮水分蒸散量)が高く皮膚バリアが弱い(2019年報告)

・再発性膿皮症の調査(107例;2018年)では、再発性膿皮症を呈する症例の70%がアレルギー性皮膚炎をもっており(ニキビダニ;18%、内分泌疾患17%)、アトピーが管理できていなければ感染症は再発する

 

☆結論

・二次感染が起きている原因はCADで痒みと炎症が起き、肌のコンディションが悪くなり表面の菌が増える事であるため、抗アレルギー薬を使用しているときの方が二次感染は起きにくい

・抗アレルギー薬でCADの症状を管理しつつ、負担の少ない外用で整える

・抗アレルギー薬の使い方としては、徹底的に症状をなくす第一段階(約1カ月)ぶり返しを抑える第2段階(見た目は正常な状態でも潜在的な炎症が存在する)に分けて治療を進める。そしてすべての維持治療においてスキンケア(保湿剤)を併用する。

・スキンケアのコンセプトとしては、1⃣薬にはできる限り頼らずに、2⃣健康な皮膚を維持する為には問題がなくてもケア3⃣皮膚の病的状態を回復/予防(予防こそ最強)が重要となります。

 

 

以上を踏まえたうえで、飼い主さんと相談の上その子に合った治療方針を一緒に考えていきます。